専攻医の教育・サポート体制


ご存知のように総合診療専門研修プログラム,新・家庭医療専門研修プログラムそして病院総合診療専門医プログラムは,基幹施設である東北医科薬科大学病院の総合診療科のみならず,他診療科や,基幹施設外の連携施設で研修をすることが求められています.遠くに離れた専攻医を大切にし,指導するために当プログラムではいくつかの工夫をしてきました.
レジデントデー
2023年8月から,毎月1回オンラインでレジデントデーを開催しています.この原稿を書いている時点(2026年10月)で39回を重ねています.現在の所毎月第3金曜日18時から行っています.当初は振り返りの会という名称だったのですが,レジデントデーと名前を変えて行っています.
専攻医のみならず,総合診療に興味をもつ研修医,学生にも参加してもらい,当プログラムの専攻医の修練の実際を知ってもらう機会としています.このホームページをご覧の皆様で,興味をお持ちの方にも参加いただけますのでお問い合わせいただければと思います.
内容としては1)ポートフォリオ検討,2)輪読会/レクチャー,3)それぞれの専攻医の振り返りの3本立てで行っています.
1)ポートフォリオ検討
専攻医の臨床経験/症例をまとめたポートフォリオ※1を皆で検討する機会を設けています.指導医と事前にやり取りをしてポートフォリオをある程度作り,それをレジデントデーで提示してもらっています.
ポートフォリオ作成は慣れないうちには完成度の高さを求めず,自分の思いを書きだしただけの状態でも提示してよいとしています.参加者がそれぞれの立場からコメントを述べます.他の専攻医もまとめられた内容を知ることによってポートフォリオの書き方に慣れることができます.
この検討会で発表したものを,地域で行っている宮城プライマリ・ケア研究会などの研究会で発表し,さらに総合診療専門研修プログラムのJ-GOALや新・家庭医療専門研修プログラムのFami-Logに登録を進められるようにしています.
※1 ポートフォリオ(経験省察研修録)
専攻医が日々の診療経験から省察を行い,総合診療の知識やコンピテンシーを身に付けるための研修記録のこと.専門医の取得・更新に際して提出が求められています.
2)輪読会/レクチャー
日本プライマリ・ケア連合学会による基本研修ハンドブック(現在は第4版)の輪読会を行っています.総合診療を行っていくうえで重要な,「患者中心の医療/BPSモデル」,「未分化な健康問題」,「複雑性」,「家族志向の医療」などの項目の内容をまとめると共に,自分たちの経験した症例に照らして議論することによってこれらの概念の理解が深め,普段の臨床にもフィードバックしています.
一方,当科の指導医や学外の講師のそれぞれ得意とする分野のミニレクチャーをしてもらうこともあります.これまで,臨床心理士の先生に認知行動療法について講義をしてもらったり,泌尿器科や皮膚科の先生方に総合診療に役だつそれぞれの科の講義をしてもらったりしてきました.
3)専攻医の振り返り
レジデントデーの最後には,それぞれの専攻医が自分の近況を報告したり,最近印象に残った出来事について話したりする機会を設けています.一人一人の時間は短いですが,特に遠く離れた専攻医がどのように過ごしているかを聞き,フィードバックをする貴重な機会となっています.専攻医のみならず,ゲストとして参加した研修医や学生も近況や感想を述べあうことによってお互いの刺激になっています.
ホームカミングデー
これらのハイブリッドで行うレジデントデーは貴重な機会となっていますが,どうしても対面で会う機会が必要です.3月と10月にホームカミングデーとして東北医科薬科大学に集まって対面で会う機会を設けています.専攻医,指導医がそれぞれの企画を準備します.
先日10月に行われたホームカミングデーでは,アイスブレイクのカードゲームでお互いの考え方を知る機会を設け,指導医企画として総合診療で使える漢方の特別講演,専攻医企画として実際に経験した症例を題材に臨床推論を参加者皆で議論する企画が行われました.また,その後集まった皆で懇親会を行い,貴重な対面の機会を楽しみました.
レジデントデーの開催時間は現在18時からとなっています.研修も時間内に終わらせられるように16時からとした時期もありましたが,特に連携病院でその時間に参加することができないため18時からとしています.
また,その時間でも参加できない専攻医のために,オンラインレジデントデーの様子を録画してオンデマンドで視聴できるようにしています※2.今後はプロテクトされた時間に研修の時間がとれるように,大学側からも環境整備をしていく必要があると考えています.
※2 オンデマンド視聴について
オンデマンドで視聴できるのは当科スタッフと専攻医,そして当科で特に許可したメンバー(入局希望者など)に限られています.
メンタリング制度
当プログラムでは,それぞれの専攻医にメンター※3を付けています.メンティー,メンターの関係は1年交代となっています.原則月に1度メンタリングをすることにしています.対面の場合もオンラインの場合もあります.話し合う内容については多岐にわたります.連携病院にいる専攻医が,メンタリングの際に困っている患者さんについて相談し,そこから本院に転院したりすることもありました.
総合診療専門研修プログラムや新・家庭医専門研修プログラムの入力状況についてもメンタリングの機会に確認しています.メンタリングのセッションはそれぞれのプログラムに用いられる「振り返り」としても入力し,専攻医プログラムをスムーズにこなせるようにしています.
メンタリングの他にもLINEグループを用いて,タイムリーに話題を共有できるようにしています.このような方法で,研修内容等で対応が必要なことが分かった際にはコアメンバー会議で検討して対応するようにしています.
※3 メンタリング制度
豊富な知識と経験を有した先輩(メンター)が,後輩(メンティー)に対して,業務上のみならずキャリア形成なども含めた幅広い支援活動を行う制度のこと.一般企業のみならず医学教育においても注目されています.
専攻医の教育・フォローにおいて大切にしていること
総合診療専門研修プログラムはまだ新しいプログラムです.専攻医は大学から離れて地域で研修することも多いです.時間的,物理的に離れていても心理的に孤独を感じないようにしたいと思っています.研修内容,またそれに限らず個人的な内容についてもこまめに対応し,専攻医の皆さんが安心してキャリアアップしていけるように心掛けています.
(文責)大原貴裕
